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嫌われボミ子の一生


酷い小説書くから誰かフルボイスにしてくれよと呟いたらやるやると言ってくれた方がいたので勢いで酷いものというかよくわからないものを書きました。

誰でもフルボイスにしてくれていいのよ!!

追記よりどうぞ。

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カタカタとキーボードを叩く音が絶え間なく耳に入ってくる。暖房で乾いた空気の中、私はPCと向き合っていた。
年が明ける前から加湿器を設置しろとひたすら念じているのだけれど、一向にそんな兆しが見えないので年度が替わってもこのままなのだろう。

今日は仕事が終わったら出かけなければならないのだが。そういえばDVDの返却日が今日までだった。
一旦家に帰らなければならない。めんどくさすぎる。念力で今ここまでワープさせることができないだろうか。
偉い人たちはこういう事が実現できるような研究をすべきではないだろうか。
ああいやだ。もういやだ。DVD1本で全てのやる気を無くした。山田くーん座布団を全て食べてくださーい。

「ヌオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

隣から奇声が上がった。
奇声を上げながら弁当を貪る同僚。1日に5回ほど弁当を食っている。箸を動かしている姿しか見たことがないのに成績はトップだ。
職場内では当たり前の光景として見られていて誰一人として気に留めていない。だが私は堪ったものではない。ふざけるな。
私の胸中など露知らず、彼はふりかけを山盛りにかけて掃除機のように米を吸い込んでゆく。弁当の中身は白米のみだ。

気にヌオオなり始めたら止まらヌオオオオオない。もうキーをヌオ叩く音ヌオオオオオオオオは耳に入ヌオッらない。
くヌオ!ヌオ!ヌォ!だらない思ヌオーン考に入り込もうとすオヌオヌオるがそれすヌヌヌヌヌら妨害される。漂ってくヌホオオオオるのりたまの香り。
あオーンヌオーンあいやだ、なヌルーンヌルーンぜこの男が隣なケバブのだ。なぜ誰一ヌホーンヌホン人として気ヌに留めないのか。ヌオオオオオオオオオもういやだ。

「もういやだ!!!!!!」

衝動的にキーボードに拳を叩きつけて叫んでいた。周囲の目が全て私に刺さっているのを感じる。

「ヌ、ヌオ…?」

「うるせええええ!!!」

どうしたの?と言いたげな顔でこちらを見る姿に堪らなく腹が立ち、飲みかけのコーヒーを奴の弁当箱にぶちまけ走り出していた。





晴天の空、世界はなんて平和なんだろう。
勢いで会社を飛び出して、誰もいない土手に三角座りで川を眺めていた。

静かだ。

息の詰まる空間と、単調な音と奇声から逃れたかったのだろうか。今までにないほどに安らいでいる。
遠くから微かに街の喧騒が聞こえてくる。あの中で私も死んだような濁った目で過ごしていたのか。
歯車として組み込まれ、日の光を感じることも無く下を向いて生きていく。

なんてくだらない世の中なのだろう。
こんな時代に生きたくはなかった。もうアレだ。縄文時代辺りに生きたかった。
毎日どんぐり探してどんぐり食べて、たまにアーティスト気分で土器とか埴輪とか作ったり。
トレンドとして稲作の第一人者とかになりたい。
なんっすかこれえぇーーー!超うまいじゃないっすかーー!どんぐりとか食ってらんないっすよー!!

一躍時の人として名を馳せて米御殿を建てたい。倉庫も高床式倉庫とかにしちゃう。鼠害防げるとかすごくね。マジできる女。
知的な所を見せたところで占いなんかも出来る神秘的なワタシを演出しちゃおう。
周りの奴らなんかバカだからキェーッ!とか奇声あげて変な動きしてれば騙せるだろ。ヌルゲー過ぎる。つまり卑弥呼は私だったんだよ!!

フッ、と妙な思考の彼方へと飛んでいた心が戻ってきた。気が付けば空は赤く染まっている。
何時間この場所にいたのだろう。腰がすげぇ痛いなにこれバカじゃないの。
腰痛と怠さのあまりドサリと後ろに倒れてみた。

何も考えずに逃げ出してしまった。明日からどうすればいいのだろう。解放感に溢れていた心は途端に沈んでしまった。
どの時代に生きていたとしても、私はこんなウジウジとしながら生きていくのだろう。
ため息が出た。と同時に携帯が鳴った。彼氏であるグリズリー・熊からのメールだった。
今日会うことになっていたのだけれど、急に高熱が出てしまったらしく会えないとのことだ。

途端に不安になった。
一人きり、熱にうなされて心細いのではないだろうか。立ち上がることができず困っているのではないだろうか。
ただでさえズボラな人だから何も食べていないのではないだろうか。
返信したいが携帯に向き合える体力があるだろうかと思うと手が動かない。
そうだ、看病に行こう。いても立ってもいられず私は歩き出した。




スーパーに着いた。体力を回復させるために何か食べさせなくては。
風邪に効くと言えばネギだ。暖かい料理を作ってあげよう。籠に長ネギを入れる。
そして玉ねぎ。万能ネギ。千住ネギ。九条ネギ。下仁田ネギ。越津ネギ。深谷ネギ。観音ネギ。ポロネギ。
瞬く間に籠はネギでいっぱいになった。色んな人がこちらを見ているが気にしていられない。私は彼が心配なのだ。
会計を済ませネギをエコバックに詰め、青臭い匂いを振りまきながら彼のアパートへ向かう。

インターフォンを鳴らすかどうか迷ったが、もし寝ていたら迷惑だろう。合鍵をバッグから出し、刺した。
奥の部屋、寝室の方から灯りが差している。起きてたのか。気が焦ってしまい小走りで部屋へ向かう。

「来ちゃった、びっくりしたよ熱なんて。大、丈…夫………」

ごとん ゴロゴロ…
手からすり抜けた袋から玉ねぎが転がりだす。

ベッドの上には裸の彼と、知らない女。

誰?どうして一緒に寝ているの?熱で苦しんでいたんじゃないの?今日は付き合って2年目の記念日でしょう?どうして…

「チョ、ナニオマッ、エッナンデオマッ、チョマテヨ」

彼が日本語ではない何かを言っている。見たくない。見たくないこんなもの。

長ネギをクナイのように投げ、彼と女の首を飛ばして息の根を止めた。一瞬で仕留めた。憎しみの心は凄まじい。
気づけば私は部屋を飛び出していた。頭の中がぐちゃぐちゃだ。涙が溢れて止まらない。
この気持ちをどうすればいいのか。心の赴くままに走って走って、何もかもを置き去りにしたくて走り続けた。





どのくらい走ったのだろう。夢中で走って気が付いたら海を越えていた。

あの後勢いで海の上を走ってアメリカへ渡った私は、身体能力を使いある組織を立ち上げた。
この世に存在するミネラルウォーターを全ていろはすの温州ミカン味に変えるテロ組織である。

やり場のない憎しみを動力にして、私はこの世界を破壊するのだ。


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